Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society
This is the first book to articulate resilience-based public policy for a constantly changing, complex, and uncertain risk society. Its primary focus is on operationalizing resilience, i.e., on incorporating elements of resilience in public policy in the context of our modern risk society. While there is a wealth of literature on resilience and disaster risk management, there are few publications that focus on the nexus of resilience and public policy, resulting in gaps between various fields and public policy for resilient societies and disaster risk management.
In response, this book integrates the latest theoretical insights on public policy and resilience and the latest practical analyses of case studies such as the Tohoku Disaster (Great East Japan Earthquake) in 2011 and Hurricane Sandy on the North American East Coast in 2012 to provide policy tools for future resilient societies and disaster risk management. The recent disaster cases illustrate that our changing, complex and uncertain risk environment requires far more resilience-based public policy through co-production of knowledge than is normally required for conventional disasters. By linking various fields and public policy, the book articulates a resilience-based public policy, i.e., the incorporation of resilience into various entities by designing and implementing “linkages.” These include national-to-local linkages, linkages between different entities such as scientific communities and decision makers, and linkages between financial, human, and information resources. Thus, the nexus of resilience and public policy presented in this book aims at better public policy to face a changing and complex risk society, together with fundamental uncertainties at regional, national, and local levels around the world.
1.背景
本書「Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society」は、著者清水美香が、共著者Allen Clarkと共に近年の大きな環境変化・災害を背景に10年以上にわたって行ってきたレジリエンス研究の集大成です。遥か昔、科学者アルベルト・アインシュタインが私たちが抱えている問題は、その問題を作り出した同じ思考レベルでは解決することはできない」と述べましたが、本書はその見方を具現化しています。従来のレジリエンス本のように生態、社会、人間の個別のレジリエンスではなく、自然システム、社会システム、人間システムに共通するレジリエンス、またはそれらを繋ぐ複合的・包括的・創造的なレジリエンス思考に焦点を当て、さらに複雑な社会課題の解決方向に向けるためのレジリエンスアプローチを打ちだすダイナミックな内容となっています。
2.研究手法・成果
本書では自然・社会・人間システムに共通するレジリエンスの構造を明示し、その機能を「リンケージ」「プロセス」「時間」「スケール」の4つの位相に分類してレジリエンスが機能する条件を明らかにし、レジリエンスアプローチとして集約されています。このアプローチは複眼的かつ多元的な思考に基づくため、複雑化する自然災害や、SDGs(国連の持続可能な開発目標)などが示す持続可能な社会のための複合課題群に対処するための、問題解決型のツールとして活用することができます。
3.波及効果、今後の予定
今後は、様々なステークホルダーが持続可能な社会を自ら創造するための社会的課題解決志向ツールとしてレジリエンスを如何に社会実装するか、それを如何に実際の持続可能な社会の各課題に適用するかについて、ステークホルダーを巻き込んで研究し、SDGs実施への具体的かつ明確な道筋に結び付けていきます。例えば、2016年5月にロックフェラー財団の100のレジリエントシティ」に選定された京都市は、「都市のレジリエンス」を「平常時の予防・強化力/危機発生時の危機対応力/危機からの創造的再生力を合わせた都市の能力」と定義づけ、レジリエンス戦略の策定作業を進めています。
なお、本研究については、2015年に出版された和書「協働知創造のレジリエンス~隙間をデザイン~」(清水美香著、京都大学学術出版会)でも詳述されています。
4.研究プロジェクトについて
関連の研究/実践/教育活動は、「レジリエンスイニシアティブ」として集約しています。
用語解説
レジリエンス:広義には「大きな変化や逆境にあってもしなやかに回復する力、変化する力、発展する力」を指す。より専門的には、「人、森、都市といったシステムが変化に対応し、発展しつづける力(または器量)」を意味する。
研究者のコメント
人・社会・自然にはそれぞれ潜在的レジリエンスを備えていますが、相互のレジリエンスに支えられてこそ、それぞれのレジリエンスを育てられるという関係にあると捉えることが、持続可能な社会を考える上での第一歩になります。またレジリエンスアプローチの本質は異なるものからその関係性や間にあるものを観察し、何が欠けているのかを観察すること」にあります。こうした思考方法や視点を通して、物事を注視すると、今まで気づかなかったアイデアや問題解決方法が浮かび上がってきます。ただし、これはテクニックや知識を得るだけでは不十分でしょう。その思考方法や視点を「体得する」ことが不可欠です。そのために日常の現場、教育、実践にこうした思考方法や視点を様々なプロセスや仕組みの中に浸させていくことが欠かせません。このためより多くの方々に「体得」いただけるよう、研究・実践を一体として今後も進めていきます。持続可能な社会は、そこに生きる人それぞれがレジリエンスを育む素養を有しているかにかかっています。こうした取り組みにより多くの人が関わり、投げた石が波打って、次に広がっていくことを願います。